同友会メディカルニュース

2026年9月号
慢性腎臓病(CKD)と尿酸の関わりについて

はじめに

本邦における、慢性腎臓病(CKD)患者は現在約2000万人と推定されています。高齢化社会でもあり、CKD患者数は約15年前の1300万人から急増している状況です。当会腎臓内科専門外来においても、数年前に比べ患者数は約1.5倍となっています。筆者自身腎臓専門外来を担当しており、CKD患者のおよそ半数において尿酸管理としての投薬治療を行っています。今回はCKDと尿酸との関わりに着目しお話ししたいと思います。

高尿酸血症の定義と症状

高尿酸血症の定義は、血清中の尿酸値が7㎎/dl以上になっている状態を指します。高尿酸血症の状態が続くと、よく知られている症状としては痛風をイメージされるかと思います。痛風とは、体内に過剰に産生された尿酸が関節に蓄積して結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気です。風が吹いても関節が痛いということで、「痛風」と呼ばれています。もちろん、痛風症状が起こらなくても高尿酸血症にはなります。

高尿酸血症・痛風の疫学

わが国の痛風患者は約130万人、高尿酸血症は約1300万人と推定されています。CKD患者数と同様に右肩上がりで年々増加しております。尿酸は約7割腎臓から体外へ排泄されます。そのため健常者より腎機能が低いCKD患者は腎臓での尿酸排泄が低下しており、高尿酸血症を発症しやすいです。今回は高尿酸血症の詳細な治療は割愛しますが、生活習慣の改善や飲水指導を基本とし改善がない場合薬物治療(痛風を伴わない高尿酸血症は一般的に8㎎/dl以上から薬物治療です)が一般的でした。

尿酸と他疾患との関連

近年様々な研究・報告を受け、CKD患者を主に治療している多くの腎臓内科医は尿酸の早期治療の重要性を認識しています。早期治療とは、尿酸の値が6~7㎎/dl程度でも更なる尿酸降下を目標とすることです。今回は、興味深いデータを以下三点お伝えしたいと思います。

図1尿酸値と(コントロール良好)高血圧患者における
心血管病(CVD)による死亡割合
図1:尿酸値と(コントロール良好)高血圧患者における心血管病(CVD)による死亡割合

Michel H. Alderman et al : Serum uric acid and cardiovascular events in successfully treated hypertensive patients. Hypertension : 1999 Jul;34(1):144-50. doi: 10.1161/01.hyp.34.1.144.

まず一つ目です。尿酸値と(コントロール良好)高血圧患者における心血管病(CVD)の死亡割合の関連についてです(図1)。アメリカの研究ですが、平均年齢50歳で比較的コントロール良好の高血圧患者(上の血圧値が140mmHg程度)を尿酸値によって4グループに分けています。それぞれのグループごとに、1000人当たりでCVDの死亡数を青グラフ心血管病以外(Non-CVD)の死亡数をオレンジグラフで示しています。赤丸で囲んだ尿酸値6.2㎎/dl以上の群では、CVDの死亡数が尿酸低値の群(4mg/dl台)より増えていることが分かります。

図2尿酸値とCKD(慢性腎臓病)の発症割合
図2:尿酸値とCKD(慢性腎臓病)の発症割合

久山町研究より

次に二つ目です。CKDを発症していない方が、尿酸値に応じてCKDの発症割合を約5年間観察した日本での研究です(図2)。こちらも尿酸値によって4グループに分けています。赤で囲っている個所は血清尿酸値が5.9mg/dl以上の群ですが、尿酸値が4.0㎎/dl以下の群に比べて、約2.1倍CKDが発症しやすいという結果を示しています。

図3高尿酸血症を中心に見たメタボリックドミノ概念図
図3:高尿酸血症を中心に見たメタボリックドミノ概念図

久留一郎:診断と治療 2012:110,813-8 伊藤裕 日本臨床 より抜粋改変

最後に三つ目は高尿酸血症を中心に見たメタボリックドミノ概念図です(図3)。高尿酸血症は、図に示すような生活習慣や肥満を背景にインスリン抵抗性(いわゆる糖尿病の前段階)をきたし発症・進行すると考えている研究者もいます。さらには、高尿酸血症がメタボリックシンドロームの発症に独立した危険(リスク)因子といわれ、「メタボリックドミノ」と提唱されています。高尿酸血症・痛風は、血液透析の治療が必要となる原疾患のCKDを含めたCVDの前段階(基礎病態)である可能性が考えられています。

おわりに

高尿酸血症・痛風は、腎機能が低下したCKD罹患患者に生じやすいという既知の事実に加え、CKDやCVDさらにはメタボリックシンドロームの発症リスクをあげます。さらには高尿酸血症の定義である7㎎/dlに満たない段階でもそれらの発症リスクがあります。実際の診療現場では、個々のおかれている併存する他疾患の有無等も考慮して、必要に応じて高尿酸血症の定義である7㎎/dlに満たない段階でも治療が行われつつあります。

参考文献

  1. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 日本痛風・尿酸核酸学会
  2. CKD診療ガイドライン2024 日本腎臓学会
  3. ここまで明らかになった!尿酸代謝ワールドと高尿酸血症の病態解明~診療と医学の最前線~ 監修 松沢佑次 メディカルレビュー社
  4. 本当に怖いのは命に関わる合併症|高尿酸血症の怖い合併症|高尿酸血症・痛風|三和化学研究所 (skk-net.com)
  5. 痛風 | 一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR) (ryumachi-jp.com)

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