季刊誌「お元気ですか」2026年10月号

「私の健康法」

由紀さおりさん

健康で、自信を持って舞台に立たないと、お客様の圧に負けてしまう。だからこそ「今日も元気、大丈夫」という気持ちで挑みます。

歌手
由紀さおりさん

―今回は150万枚のミリオンセラー『夜明けのスキャット』でデビューされた由紀さおりさんにご登場いただきました。日本を代表する歌手として国際的にご活躍をされるほか、司会者・タレント・俳優としても数多くの番組にご出演、マルチな才能を発揮される由紀様に、仕事に対しての向かい方やご自身の健康法についてお話いただきました。

お客様からいただく拍手を
しっかり受け止めるために

健康とは、生きていくそのものの原点であり、すべての基盤だと思います。健康でないと、歌を歌うということに限らず、日々を明るく楽しく暮らしていくことができません。自分が健康でないと何事も始まらないと思っていますので、とても気をつけています。

私がデビューしたのは1969年のことです。その頃は怖いもの知らずというか、自分の健康を考えるよりも、与えられた仕事をきちんとこなせるかどうかの方が先でした。そして、この仕事はチャンスを自分のものにしない限り世に出ていくことが難しい。世に出るということがどれだけ大変か、そしてどれだけラッキーなことか。そのチャンスを自分で潰してしまうこともありますし「これでいい」という完成形もない。そういう仕事だと思っています。

ですから、日々努力を続けて挑み続ける気持ちがないと、舞台に出てお客様から拍手をいただいたとき、その拍手を自分の懐でしっかり受け止めることができません。健康で、自信を持ってお客様の前に立たないと、お客様の圧に負けてしまう。その意識はいつも心の中にあります。だからこそ、健康で「今日も元気、大丈夫」という気持ちで、幕が開いて自分の名前が呼ばれ、舞台に登場したときにいただく拍手を、しっかり受け止められることが第一であり、一番大事なことだと思っています。

ドレスを着るときには今でも7センチのヒールを履いて歌っています。そのヒールを履くためには太ももの筋肉を落とせませんし、股関節やアキレス腱、足、そして歌う時の身体のくせなのでしょうか。腰の状態を、これ以上悪化させないようにする必要があります。

10年ほど前からトレーニングを始めており、今は4日に1回くらいトレーニングに通っています。パーソナルトレーナーについてもらい、「今日はここが少し痛い」「ここがつらい」といった状態を見てもらっています。スポーツマッサージに近いマッサージの先生にも10年以上お世話になっていて、トレーニングで鍛えることと、マッサージで体をほぐすことの両方を続けています。さらに、2か月に1回の定期検診で血圧や中性脂肪などをチェックし、年に1回は血液検査も受けています。

骨折したその日にステージ
三角巾代わりに子供服を

2年ほど前に鎖骨を骨折したのですが、そのときには骨密度を増やすための皮下注射を受けました。1年間先生のところに通い、その後は半年毎に通って状況を見ていただいています。

最初に診ていただいた先生にはすぐ手術をすすめられましたが、知り合いの方に「ここに傷を残しちゃだめだから、手術はしないほうがいい」と言われ、別の先生を紹介していただきました。その先生にはコルセットを出してもらい、2か月間、仕事がないときも寝るときもコルセットをつけて過ごして治しました。

鎖骨を骨折したその日に金沢へ行かなければならず、翌日から2日間歌う予定がありましたので、骨折した状態でのステージになりました。ドレスを着るときはコルセットを外し、マイクを持つ側が骨折している方だったので反対の手でマイクを持ち、どこまでバランスを取って歌えるか、初めての挑戦でした。

2日目は三角巾代わりに、近くの子供服屋さんで子供用ワンピースを買ってきてもらい、チュールレースのような部分を使って腕を支えました。こんな状態でも「もうだめだ」という精神状態ではお客様の前に立てませんので、会場の空気が沈まないように努めました。

童謡コンサート40周年
美しい日本の歌を残したい

今年は童謡コンサートを始めてから40周年記念なので、日本国内で40周年公演を行ったあと、来年5月末か6月頃にニューヨークのカーネギーホールを押さえる準備をしています。カーネギーホールには、これまで童謡コンサートの10年目と12年目に姉と一緒に2回立っています。10周年の時にはワールドツアーを行い、最終的にシドニーのオペラハウス、帆掛け船のような形をした、あのホールで歌いました。3度目のカーネギーホールで、童謡コンサートとしては一区切りをつけましょうと考えています。最後を飾るホールは、やはり憧れのホールでもう一度歌って締めくくろう、ということですね。

私の場合、姉と一緒に日本の歌を歌わせていただいていることが、世界で歌うきっかけになりました。7月にカンボジアのシェムリアップという、アンコールワットのある場所で、現地の言葉でも歌う予定です。カンボジアには日本の歌なのに自国の歌だと思われている曲がたくさんあるんです。その中には『夕焼け小焼け』や『ここに幸あり』のような曲もあり、『上を向いて歩こう』は、アンコールワットに向かう観光地の道で、日本人が来ると現地の方が歌ってくださるような存在になっています。色々なところで日本の歌が根付いていて、本当にすごいことだと思います。

今は言葉が少し乱れてきている時代だからこそ、美しい日本語の歌をきちんと残したい。姉と一緒に歌ってきた童謡コンサートの40周年を一区切りとし、その後は私たちの歌声をCDなど何らかの形で残していきたい。それが自分たちの歌というより、この国に暮らす全ての人たちの歌だと思っていますので。

アメリカへ行く準備をしながら「油はどうなるんだろう」「円とドルの関係も厳しい」と、想定していたよりかなりお金がかかりそうだと感じることもあります。「じゃあ来年、再来年にしようか」と言っても、もう自分の肉体がそれを許さない。だから今やるしかない、という状況です。そのためには、やはり健康であることが大事です。健康でなければ何もできませんからね。(談)

由紀さおりさん

<プロフィール>
由紀 さおり(ゆき さおり)さん
1946年生まれ。群馬県桐生市出身。
1969年に東芝音楽工業より『夜明けのスキャット』でデビューし150万枚の大ヒットとなる。第12回日本レコード大賞の歌唱賞を受賞。2011年に世界50か国以上でCD発売・デジタル配信され、世界的にも高い評価を受ける。2012年に紫綬褒章、2019年に旭日小綬章を受章。

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